いちひ
万葉の花とみどり_いちひ 伊智比 イチイ
あしひきのこの片山に二つ立つ 櫟が本に梓弓八つ手挟み…
乞食者 巻十六3885
『読み』あしひきのこのかたやまにふたつたつ いちひがもとにあづさゆみ やつたばさみ… ほがひびと
『歌意』この片山に二本立っているいちいの木の下に、あずさゆみを八本持って…(長歌:鹿を待ち構えていると…と続く)
常緑の針葉樹
深緑色の葉の間に垣間見える深紅の果実が美しく、庭園や生垣等に好んで植栽されています。イチイの名は、最高官位の一位のことで、これは古代の仁徳天皇即位の礼、大嘗祭において、イチイ製の笏(しゃく)が用いられた史実に由来するとも。果実は甘く、そのまま食用にしたり果実酒にされることもありますが、種子には有毒のアルカロイド類が含まれているので注意が必要です。年輪の幅が狭く緻密で狂いが生じにくいため、工芸品の木材としても優れています。作者の乞食者(ほがひびと)とは、めでたい席で芸をして人を喜ばせることを売りにしていた人々のことです。
管理者「大伴妬持」の声
※万葉集に詠み込まれた「いちひ」は、別種の「イチイガシ」であるとするのが定説となっています。このページでは現在「イチイ」と呼ばれる樹木を扱い、「イチイガシ」はまた別の機会に紹介する予定です。
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