はちす
万葉の花とみどり_はちす 蓮 ハス
勝間田の池は我知る蓮なし 然言ふ君が髭無き如し
婦人 巻十六 3835
『読み』かつまたのいけはわれしるはちすなし しかいうきみがひげなきごとし
『歌意』勝間田の池には私の知る限り美しい蓮などありませんよ。そういうことを言うあなたに髭が生えていないようにね。
ハチの巣転じてはちす
外出先で美しいハス(=美人)でも目にしてきたのでしょ…そばに使える婦人がそれをからかって、確かあの池にはハスなどは咲いていませんでしたがねえ、あなた様に髭がないように…などとやり返した歌となっています。しっかり見抜かれた当の髭無しの御仁は、天武天皇の第七皇子、新田部親王であり、蓮の字は「恋」に通じることから、この歌には他にもいろいろ恋情にかかわる諸説があるようです。蓮は、スイレン科、熱帯産、多年草の水生植物で、花托(花の中心部:実がなる)が蜂の巣の形に似ていることから、「はちす」と呼ばれてきました。また、仏教との関わりもあり、その巨大な花は極楽浄土に咲くとされ、そのイメージは仏像の台座に使われてもいます。
花托はハチの巣のよう
花のスケールの大きさや色の美しさのわりに、万葉集では花そのものを詠み込んだ歌は他に見あたらず、もっぱら葉の方ばかりが「はちすは」として登場するから不思議です。次の長忌寸意吉麻呂の歌でも、蓮と里芋の葉を引き合いに出していて、食物を盛るのに葉が使われていたことが伺えます。 蓮葉はかくこそあるもの意吉麻呂が 家なるものは芋の葉にあらじ
長忌寸意吉麻呂 巻十六 3826
考古資料からも古来より食べ物として好まれてきたことは確かですが、観賞用として本格的に栽培されるようになったのは、江戸時代(上野の不忍池が有名)以降だという点は意外な感じがします。また、蓮の根の部分ですが、文字通り「レンコン」として親しまれ、特に縁起物とされるのは、根に穴があって先を見通すの意からだそうです。根に穴があるのは水生植物であるハスは、葉の表面にある気孔から摂取した空気を葉柄を通じて地下茎に貯える機能を備えています。試しに、水底のレンコンの先端を切り落とし、葉柄の部分から息を吹き込んでみると、空気が柄の4本の穴を伝って地下茎の空気タンクに運ばれるしくみになっていることがわかります。
種は長寿
ハスの種子は種皮が硬く発芽させにくいのですが、逆に条件が良ければかなり長期間保存が効くということでもあります。千葉県検見川市や埼玉県行田市の約二千年前の地層から発見されたハスの種子が、発芽したというニュースは人々を驚嘆させ、ハスの種がいかに長寿であるかがわかるエピソードとなりました。これらは古代のハスとして、各地で大切に栽培され、特に行田市ではその後、古代蓮の池公園建設に至りました。なお、現在各地で栽培されているハスは、仏教の本家インドの原産で、すでに縄文末期に渡来していたことがわかっています。
管理者『妬持』の声
花が咲くときにポンと音がするらしいのですが、実際のところはどうなのでしょうか…。早朝からじっと観察するほど我慢強くないし、確実な情報なら映像と音を記録したいものです。
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